ブラック企業を規制するには・・
いわゆるブラック企業は、
過酷な労働条件を課すことなどにより、
従業員を追い込んで病気にしてしまいます。
ブラック企業の害を受けてしまった元従業員は
治癒したとしても精神的なダメージから、
社会復帰困難な状態になってしまうことも多いと聞きます。
直接的な医療費負担や、就業困難に陥ったことによる
社会的損失は、元従業員だけでなく、
社会保険料や福祉給付などで、社会全体が負うことになるわけです。
排煙や汚水垂れ流しなど、目に見える公害とは異なりますが、
これも経済学でいうところの外部性(外部不経済)ではないかと。
外部性とは、ある経済主体(ここではブラック企業)が、
市場での取引を通じることなく、別の経済主体の
効用関数または生産関数に影響を与えることをいいます。
以下、学びたての公共経済学の知識で考えてみました。
完全競争市場における企業は、限界費用が市場価格に等しくなるように
その生産量を決定します。*1
ここでは、元従業員の病気や就業困難による社会的費用は考慮されないので、
生産量を決定する限界費用は私的限界費用のみです。
このため、外部性を発生させる企業の生産量は、
社会的に過剰になってしまうわけです。
ここで、外部性の解決のために、
生産量当たり限界外部費用に等しい税
(ピグー税)を課すことによって生産量を下げ、
社会的余剰を最適化することができる・・と
教科書には書かれてありました。
税を決める政府は限界外部費用を完全に知ることはできず、
元従業員の病気とブラック企業の労働環境の因果関係を
証明することも難しいです。
ピグー税の課税標準や税率を決めるのも困難でしょう。
それでも、ブラック企業経営者の「良心」に訴えたり、
名指しして直接的に規制をするよりも、
ピグー課税により労働環境の改善やブラック企業の市場退出を
促進させた方がよい、とも。
いや、こんなところで空論を述べているよりも、
緊急避難的に直接規制をすべきレベルまで
労働環境の悪化は来ているのかもしれません。
そんなことを考えている、日曜の午後なのでした。
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*1:居酒屋や外食産業は教科書的な完全競争市場に近いとも考えられます。