完全競争市場の前提と「市場の失敗」。
完全競争市場といわれる市場は、
4つの条件を満たしている必要があります。
①プライス・テイカー。
消費者・企業などの経済主体は市場全体の規模に
比較してじゅうぶんに小さく、プライス・テイカー
(価格受容者)として行動する。
各経済主体は価格受容者であり、自らの意思で
値上げ/値下げをすることはできないという前提です。
②完全情報。
取引の当事者は、取引される財の性質と価格について
完全な情報を持っている。
財(商品)の性能・品質について情報が完全であり、
取引前に全てを把握しているという前提です。
③取引される財の同質性。
財は同じであり、ブランドやイメージによる差は無い。
取引費用も無いものとされる前提です。
④フリー・エントリー。
市場への参入・退出は自由です。
政府による規制や参入障壁は存在しないという前提です。
市場経済の最大のメリットは、価格メカニズムに導かれて
最適な資源配分が実現されるとされます。
これは、教科書の中にしか存在しないものであり、
現実にはこの機能が発揮されない市場も存在します。
「市場の失敗」の要因としては、以下の5つが代表的に挙げられます。
①規模に関する収穫逓増の存在。
電気・水道・鉄道など初期投資が大きく、
規模が大きければ収穫が逓増していく
産業では独占化していきます(自然独占)。
このような市場では供給は過少になります。
②外部効果の存在。
自動車の排気ガスや工場汚水廃水など、
ある経済主体の経済活動が市場取引を
経由せず、他の経済主体へ影響を及ぼすことを
外部効果(外部性)といいます。
負の外部性がある場合、供給は過大となります。
③公共財の存在。
国防・消防・警察など、消費の非競合性と
排除不可能性を持つ財は、公共財と呼ばれます。
公共財は、市場ではまったく供給されないか、
過少にしか供給されないという問題があります。
④情報の不完全性(非対称性)。
取引される財の性質について、売り手と買い手の間の
情報が不完全、あるいは非対称であるために
資源配分の効率性が阻害されます。
中古車の品質についての情報の非対称性による
市場が不成立になったりするという例が挙げられます。
⑤税・補助金・価格支持政策の存在。
税金や補助金、家賃の上限規制など価格支持政策は
価格シグナルを歪め、一つの財に対して
供給者と受容者が異なるシグナルを受け取ることに
なり、資源配分を非効率にしてしまいます。
市場の失敗に対し、これを矯正するために政府の介入が
正当化されることになります。
しかし、政府自身が社会全体の資源配分の効率化を目的とする
保証はないからです。
政治家や官僚は自らの私的利益のために行動を歪め、
市場の失敗を矯正するどころか、資源配分をより
非効率にする可能性すらあるためです。
これは、市場の失敗に対し、政府の失敗と呼ばれます。
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