すらすら経済学を学ぶ日記。

会計・税務の実務家が経済学をすらすら学ぶ日記。

独占企業をどう規制する?

完全競争市場では、消費者余剰と生産者余剰を合せた総余剰が
均衡での取引量において最大となる、とされます。

一方、巨額の初期投資と固定費用を要する
電力業のような費用逓減産業では
自然独占が生じるため、
政府は最初から地域独占を認めています。

独占企業の利潤最大化条件は
限界収入MR(X)=限界費用MC(X)となる生産量Xであり、
完全競争市場における均衡条件である
価格P=限界費用よりも過少となります。
独占での均衡では、完全競争市場での均衡に比べ、
生産量は小さく、価格は高く、消費者余剰は小さく、
そして生産者余剰は大きくなるため、
政府は資源配分の効率性を高めるため、
料金(価格)規制などの介入を行うのです。

その際、規制価格を定める方法は2つ考えられます。

①限界費用価格規制(first bestな方法)
政府が独占企業に対し、
需要と供給を一致させ、
かつ限界費用と等しくなるような価格を
設定することを強制します。

政府が善良で良心的であり、かつ
無限の能力を持った全知全能の存在ならば
最も効率的な資源配分を達成する
最善の価格規制を行うことが可能となります。

しかし、限界費用は現実には計算困難であり、
限界費用を計算して経営を行う企業は
存在しません。
また、限界費用価格規制が可能としても
平均費用が需要曲線の上に位置している場合は
企業は規制により赤字となりため、
租税による補填(補助金)という
新たな非効率性が発生してしまいます。

②平均費用価格規制(second best)
政府が独占企業に対し、
需要と供給を一致させ、
かつ平均費用と等しくなるような価格を
設定することを強制します。

これは現実に電力会社の総括原価方式として
実際に採用されています。

しかし、収支が一致するような価格規制は
費用削減のインセンティブが存在せず、
非効率な経営を行ってしまう可能性が高くなります。*1

このため、費用とは無関係に規制価格を決める方法や、
NTTの分割民営化や新規参入を認めるなどの
方法への転換などへも変化してきています。

電力産業は、新規参入が部分的に認められていますが
固定価格での買い取り義務付けなど
別の歪みも見受けられています。

これからを考えるために、
勉強を続けて行こうと思います。

本日の参考文献はこちら。

ミクロ経済学

ミクロ経済学


公共経済学入門 (経済学叢書Introductory)

公共経済学入門 (経済学叢書Introductory)

*1:現実の電力会社では過度な福利厚生や相談役などへの高給待遇などのレントが発生していました。