すらすら経済学を学ぶ日記。

会計・税務の実務家が経済学をすらすら学ぶ日記。

社会主義計画経済の不可能性について。

市場経済(完全競争市場)においては、
すべての家計と企業が財や生産要素の
市場価格を共通のシグナルとして取引を行い、
自らの効用や利潤を最大化します。

しかし、社会主義計画経済においては、
中央政府がすべての家計の効用に関する情報と、
すべての企業の生産技術に関する情報を収集し、
効率的な資源配分がなされるよう計画を立てなければなりません。

これが現実的に可能か、という論争が
ソビエト社会主義成立直後から始まりました。
オーストリアの経済学者ミーゼスは、
早くも1920年に社会主義計画経済の不可能性を論じています。
イタリアの経済学者バローネは可能と反論しましたが、
ハイエクは、計画経済を実施するためには
膨大な統計資料を集め、数百万の連立方程式
解かなければ計画経済は不可能であると断じました。

これが、社会主義経済計算論争です。
論争はソビエト内ではなく、資本主義国の経済学者の間で
行われたわけですが、その結果は、ご承知のとおりです。

社会主義経済が失敗したのは、
①政府が一手に情報を収集するには多大なコストを要すること。
しかも、企業側には正しい情報を政府に申告する
インセンティブが無いため、集められた情報は不正確なものでありました。*1

②労働者に適切な労働インセンティブを与えることに失敗したこと。
スターリン時代に超過ノルマを果たした労働者に
多く支払ったことなどもありましたが、
これは例外で働いても働かなくても給与は変わらず、平等でした。

社会主義はこのように失敗したわけですが、
冒頭で書きました「効用と利潤の最大化=社会的余剰の最大化」は
いくつかの仮定条件を満たした完全競争市場に限定されます。

今日の混合経済における政府の役割は、
市場の失敗の補完のはずです。

その手法と限界を、学んでいきます。

社会主義経済論争については、こちらより。

岩波 現代経済学事典

岩波 現代経済学事典


ご紹介いただきました。
ミーゼスの著作はkindleで読めます。
社会主義共和国における経済計算

社会主義共和国における経済計算

*1:正しい生産能力を申告するとノルマが増加したかもしれません。