すらすら経済学を学ぶ日記。

会計・税務の実務家が経済学をすらすら学ぶ日記。

国債残高はどのように膨張してきたか?

本日のお題はこちら。

国債膨張の戦後史―1947-2013現場からの証言

国債膨張の戦後史―1947-2013現場からの証言

国債には、税収では賄いきれない歳出(公共支出)をファイナンスするための財政的側面と、発行と引受、そして金融商品として流通していく金融的側面の二つがあります。


本書は、大蔵省で長年、国債に関わる実務に携わった著者が、戦後の均衡財政主義時代から昭和40年度初めての建設国債発行、昭和50年度の赤字国債発行、そしてバブル経済による一時的な赤字国債発行無しの時代を経て、バブル崩壊後のなんでもありの財政支出による国債残高累増の歴史をその内幕も含め、コンパクトに整理したものであります。


著者の実務から、やはり国債の財政的側面に関する記述が多いのです。
戦後すぐは国債発行=軍事費(防衛費)充当というイメージが国民の間に強く、政治家や官僚が気を使ったこと。


シンジケート団時代の銀行・証券会社との折衝や、政治家、大蔵官僚などの決断、債券先物の標準者がなぜ6%に決まったのかなど、興味深いエピソードがいろいろ読めます。


本書の冒頭に、大量の国債を円滑に消化するために大蔵省(財務省)の官僚機構が懸命に制度を整備したために、あまりに上手くいってしまっていることが財政規律がゆるむことにつながるという皮肉を嘆いております。


著者によれば、現状は国家財政の持続可能性としては既に破綻状態ではあるが、市場はまだそうは見てはいないとも、と。


国債の金融的側面に関しては、同じくきんざいのこちらが詳しいです。

国債のすべて―その実像と最新ALMによるリスクマネジメント

国債のすべて―その実像と最新ALMによるリスクマネジメント


国債をめぐる問題は、財政的側面・金融的側面に限っても、あまりに複雑で全貌を把握するのは難しいですが、この2冊で大まかな事実関係は把握できるかと思います。


この問題に関心を持つ方々にお勧めします。