すらすら経済学を学ぶ日記。

会計・税務の実務家が経済学をすらすら学ぶ日記。

市場の限界と「政府の失敗」について。

市場が完全に効率的になるのは
かなり制限的な仮定のもとでのみです。

こちらの過去エントリーもご覧ください。
完全競争市場の前提と「市場の失敗」。

この市場の失敗がある場合、
限定的な政府介入は、
最悪の問題を解決することができないにしても
軽減することができるというのが
経済学者の間では合意されているそうです。

しかし一方、市場が失敗するように
「政府の失敗」もあります。


それが、次の4つです。


①限られた情報。
政府の持つ情報は限定的であります。
貧困者への再分配を行うべきであることは
社会的にほぼ合意されていると思われますが、
誰が本物の貧困者であるか、
政府は区別することができません。



②民間市場の反応に対するコントロールの限界。
政府は市場を規制することはできますが、
直接コントロールすることには限界があります。
例えば、政府は診療報酬の単価を定めることはできますが、
国民が年に何回、受診するのか
直接コントロールすることはできないので、
医療費への国庫支出が思わぬ水準まで増大したりもします。



③官僚に対する支配力の限界。
市場を規制/コントロールしようと
法律を制定するのは議会ですが、その実行は
官僚機構が政令・施行規則、通達やQ&Aで
実務を行います。
官僚は議会の意向をそのまま実行しようとする
インセンティブに欠ける場合もありますので、
法律の意図がどこまで実施されるかはわかりません。


④政治過程に課された制約。
議員は選挙で再選されることが目的となるので
必要な選挙資金確保や支持層の取りまとめに
特定の利益集団の便益のために働くかもしれません。
また、選挙民側は、複雑な問題に
簡単な解決策を求める傾向があり、
貧困や格差など複雑な原因で生じている現象に対して
簡単だが誤った選択肢を示す議員へ
投票してしまうかもしれません。


これらが「政府の失敗」の原因です。


本日の参考文献はこちら。

スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)

スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)