読書ノート「生活保護の経済分析」(その2)
読み終わりました。
2008年3月出版なので、リーマンショック後の急激な雇用環境悪化、現役層の生活保護急増の問題は触れられておりません。
また、あくまで(数式まで使用した)経済学的視点によるものであり、貧困問題を扱った本にありがちな道徳的糾弾や感情論とはいっさい、無縁であります。
なお、生活保護層を食い物にする「貧困ビジネス」については、まったく登場せず分析の俎上には上げられておりません。
- 作者: 阿部彩,國枝繁樹,鈴木亘,林正義
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
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そのあたりも加えた上で、実証研究も進んでいるでしょうから、改訂版を望みたいところであります。
以下、書き抜きと思考メモです。
「・・貧困の連鎖を防ぐという意味では、教育職業能力という形での人的投資の効果が高いのは実は就学前の児童に対するもの・・米国ではヘッドスタートと呼ばれる低所得層の家庭の児童への就学前教育プログラムが実施され、有効性が確認されている」ふむふむ
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
「既存の実証研究に基づく限り、低所得層への積極的雇用政策(職業訓練、雇用補助金、公的部門での直接雇用)で就労状況が大幅に改善し、生活保護が不要になるということはない」ここでも一挙解決は不可能というごく当たり前の事実
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
「対象を絞り、適切な方法で実施されるなら低所得者層、特に女性の経済状況の改善に効果が」伝統的な公的扶助(児童扶養手当、生活保護)との組み合わせが効果的、と
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
「日本の母子家庭の就労率は世界的に見てかなり高い」よく指摘されますね。約9割が働いている
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
生活保護世帯のうち、母子家庭は約1割。なお、母子家庭の大部分は児童扶養手当と就労で生活しており、保護受給者は1割程度しかない。さらにその半数が就労による収入と保護の組み合わせ
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
生活保護のみで暮らしている母子家庭はごく少数。これはケースワーカーの指導もある(平成19年統計データ)
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
しかし、しばしば指摘されるようにいったん生活保護受給へ移行してしまうと潤沢な給付と就労すると保護費が減るという仕組みによる「貧困の罠」へ落ち込んでしまい、抜け出せなくなる
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
また、生活保護受給の母子家庭と、就労+児童扶養手当で暮らしている母子家庭で逆転現象(生活保護の方が水準が高い)が起きている(医療扶助などもあるため、経済厚生はもっと逆転していることも
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
児童扶養手当受給者を対象に、就労を支援する職業訓練プログラムも2003年から始まっているが、参加者は手当受給者の1割で、看護師など正規の職に就いた者は全体の1%未満。。
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
母子家庭のうち、中卒資格しかない、子供の数が多いなど就労条件が厳しい方ほど生活保護へ依存。そして就労しようにも低賃金非正規しかない
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
この辺まで来ると、女性に著しく不利な日本の労働市場自体を改善しないと難しいのでは。
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
「諸外国と比べ、我が国のホームレスの特徴は「物乞い」がほとんど存在せず、廃品回収や都市的雑務(?)、日雇いなど「労働」により生計を立てていること」平均月収は約4万円程度(2007年調査
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
なぜ公費を使ってホームレス対策(就労支援など)を行うのか?→ホームレスには負の外部性がある。ホームレスが町内に10人増加すると地価が3%低下したとの実証研究があり(2004年、大阪
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
マスグレイブの古典的な財政学の命題によれば、所得再分配は中央政府の仕事である。ではなぜ地方政府が生活保護などへ関与するのか
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013
分権化定理。公共政策(所得再分配も含む)に対する選考が地域単位で異なる場合、全国一律よりも地域別の施策の方が厚生損失を削減できる
— すらたろうさん (@sura_taro) 1月 20, 2013