すらすら経済学を学ぶ日記。

会計・税務の実務家が経済学をすらすら学ぶ日記。

経済学入門テキストいろいろ。(その1)

「経済学入門」的なテキストをいろいろ読み漁っています。
中にはわかりやすさを追求しすぎて
もはや「経済学」の原形を留めていないものもありますが・・w

今日はこんなのを読み終わりました。

単位が取れるミクロ経済学ノート (単位が取れるシリーズ)

単位が取れるミクロ経済学ノート (単位が取れるシリーズ)

身も蓋も無いタイトルですがw
学部1年生~2年生向けでしょうか。

わずか150ページ弱で、限界効用理論、無差別曲線から始まって
消費者/生産者理論、均衡、独占、市場の失敗まで
15章立てで簡潔にミクロ経済学を説明しております。
これは簡単にしすぎだろ!という章もありますが、
章末に穴埋めとか短文での定義説明の練習問題がついていて、
理解度もチェックできるという構成になっています。

ただし、この本には計算問題がまったくありませんので、
別のテキストで補う必要があります。


少しミクロ経済学を学んで
なんとなくわかってきたというレベルの方でも、
短時間で知識が整理できますので
入門書とバカにせず、手に取ってみてはいかがでしょうか。

ブラック企業を規制するには・・

いわゆるブラック企業は、
過酷な労働条件を課すことなどにより、
従業員を追い込んで病気にしてしまいます。
ブラック企業の害を受けてしまった元従業員は
治癒したとしても精神的なダメージから、
社会復帰困難な状態になってしまうことも多いと聞きます。

直接的な医療費負担や、就業困難に陥ったことによる
社会的損失は、元従業員だけでなく、
社会保険料や福祉給付などで、社会全体が負うことになるわけです。

排煙や汚水垂れ流しなど、目に見える公害とは異なりますが、
これも経済学でいうところの外部性(外部不経済)ではないかと。

外部性とは、ある経済主体(ここではブラック企業)が、
市場での取引を通じることなく、別の経済主体の
効用関数または生産関数に影響を与えることをいいます。

以下、学びたての公共経済学の知識で考えてみました。

完全競争市場における企業は、限界費用が市場価格に等しくなるように
その生産量を決定します。*1
ここでは、元従業員の病気や就業困難による社会的費用は考慮されないので、
生産量を決定する限界費用は私的限界費用のみです。
このため、外部性を発生させる企業の生産量は、
社会的に過剰になってしまうわけです。


ここで、外部性の解決のために、
生産量当たり限界外部費用に等しい税
ピグー税)を課すことによって生産量を下げ、
社会的余剰を最適化することができる・・と
教科書には書かれてありました。


税を決める政府は限界外部費用を完全に知ることはできず、
元従業員の病気とブラック企業の労働環境の因果関係を
証明することも難しいです。
ピグー税の課税標準や税率を決めるのも困難でしょう。


それでも、ブラック企業経営者の「良心」に訴えたり、
名指しして直接的に規制をするよりも、
ピグー課税により労働環境の改善やブラック企業の市場退出を
促進させた方がよい、とも。


いや、こんなところで空論を述べているよりも、
緊急避難的に直接規制をすべきレベルまで
労働環境の悪化は来ているのかもしれません。


そんなことを考えている、日曜の午後なのでした。


本日の参考文献はこちら。

コア・テキスト公共経済学 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端)

コア・テキスト公共経済学 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端)


ミクロ経済学

ミクロ経済学

*1:居酒屋や外食産業は教科書的な完全競争市場に近いとも考えられます。

多面的にアフリカを知る。

読書の楽しみは、知らなかったことに目を開かせてくれることにあります。

経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)

アフリカというと、貧困、飢餓、内戦、ジンバブエのような失敗国家・・とネガティブなイメージばかりが思い浮かぶかと思います。
しかし、昨今話題のように石油やレアアースなどの天然資源開発が進み、経済発展が著しい一面も。
そして、その資源権益には中国が資源確保を狙い、開発と支援を行っていること。
一方では、大多数を占める農民は化学肥料の入手などもままならず、収穫があがらないため貧困のままであること。そのため、不平等度をあらわすジニ計数は信じがたい状況にあがり、貧富の格差がひらいていることも。
中国が進出する面が目立ちますが、日本商社なども進出。
などなど、アフリカの経済の状況を実にリアルに読みやすく紹介しています。


長期低迷が続く日本経済と、多額の援助にもかかわらずいっこうに「離陸」しなかった過去のアフリカ経済なども比較しつつ、多面的にアフリカを知ることができる一冊です。


お勧めいたします。

父が娘に語る経済学。(その1)

パパ。40代。金融機関勤務。
娘。リアルJK。


娘「パパ、経済学って面白いの?」

パパ「うーん、面白いよ」

娘「どんな風に?」

パパ「うーん、世の中がどうしてこういう風に動いているのか、少しわかるようになる。」

娘「でも、経済学って正解がないんでしょ?先生がそう言ってた。」

パパ「確かに、正解はないかも。でも、現実はすごく複雑だけど、経済学は世の中をすこし切り取って見せてくれるんだ。」

娘「ふーん。」


さて、娘は経済学に興味を感じれてくれるようになるでしょうか。

読書ノート「夫婦格差社会-二極化する結婚の形」。

本日のお題はこちら。
格差問題論争の火付け役となりました橘木教授の研究。
新書サイズということで易しいです。

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)
























読書ノート「地方財政論入門」(その1)

本日のお題はこちら。
一橋大学公共政策大学院教授、佐藤主光先生の著になるものです。

地方財政論入門 (経済学叢書Introductory)

地方財政論入門 (経済学叢書Introductory)















素晴らしい切れ味です。
特に、第二章の冒頭「経済学で考える」は経済学・公共経済学の簡潔な入門エッセンスが凝縮されており、よくある経済学そのものや公共の役割に関する誤解を明快に解き明かしております。

続きます。

読書ノート「財政赤字の淵源-寛容な社会の条件を考える」

財政赤字の淵源 --寛容な社会の条件を考える

財政赤字の淵源 --寛容な社会の条件を考える















なぜ今日の日本社会がこのような不信に満ちた社会になり、財政赤字はそれにどう関係しているのかという問題を、戦前、大蔵省時代まで遡って考察しています。
原因と結果はわかりましたが、では著者が提言する「寛容な社会」へはどうしたら変わっていけるのか。
そこは明確ではありませんでしたが、自らに課された課題として考えていこうかと思います。